はしごくだりの現象を考えよう
さてさて、力学に関する第二回目として、はしごくだりに働く力を考えていきましょう。
おっと、ひょっとして『簡単過ぎる』って思って飛ばそうとしてたりしませんか?
あえてこのような簡単な現象を取り扱う事にはちゃんと訳があります。
もしも難しい問題をいきなり取り上げた場合、問題自体の難しさに目が眩んでしまって力学問題を解く手順やコツに目がいかなくなるかも知れないと思ったのです。
簡単過ぎるかも知れませんが、しばらくはお付き合い下さい。
はしごくだりをスムーズに解ける頃には、貴方の力学を解く力は十分と言って良いレベルに達しているでしょうから。
1.力学問題を解く目的を設定しよう
基本と言えば基本ですが、学校の勉強ばっかりやっていると忘れがちな部分がコレです。
力学問題を解く目的が無いと、何をして良いのかサッパリ判らなくなってしまいます。
※つまり、どういう状況におけるどういう運動を調べる必要があるのかと言うことです。
ここでは簡単に、『はしごくだりのオモチャを設計するため』にはしごくだりの現象を解明するという目的を設定します。
つまり、『どのような状況だとはしごくだりは成り立たなくなるのか?』という事を確認する事になります。
さらに噛み砕くなら、以下の事を調べる事になります。
- 駒の重量や重心位置はどの程度でなければならないか?
- 駒に刻む溝の形、寸法はどのようにすれば良いか?
- はしごの段間の距離はどこまで離して良いか? また何ミリ以上離すと成立しなくなるか?
2.状況を分けて整理しよう
目的が確認できたら、まずはこのはしご下りという現象について、5つの状況に分けて整理します。
つまり、
- はしごの最上段で手を離した時
- はしご上で回転している瞬間
- はしごの上で回転が終わり、次のはしごに移る瞬間
- はしごを1段降りて次のはしごに移った瞬間
- 地面に到着した瞬間
の5つです。
このはしご下りという運動はこの5つの運動から成り立つという事に異論は無いでしょうか。
次に、それぞれの瞬間について働いている力を文として記述します。
- はしごの最上段で手を離した時
→手を離した瞬間、駒がバランスを崩し回転を始める。この時駒には重力と静止摩擦力が働いており、重力による回転力>静止摩擦力のため、駒が回転を開始する。
- はしご上で回転している瞬間
→重力により駒は下方向に引っ張られるが、はしごに引っかかっているため途中で放り出される事は無い
この時駒には重力、慣性力、向心力、動摩擦力、空気抵抗が働いていると考えられる。
- はしごの上で回転が終わり、次のはしごに移る瞬間
→駒の切れ込みのため、はしごの段から駒が落下する。
この時に働いている力は重力、慣性力、空気抵抗である
- はしごを1段降りて次のはしごに移った瞬間
→駒は落ちた事による衝撃力を受ける。この瞬間下方向への運動が一度停止する。しかし駒は再度バランスを崩し回転を始める。
この時駒に働く力は、はしごからの反力、重力、慣性力、動(静?)摩擦力である。
- 地面に到着した瞬間
→駒は地面に着地した事により自立する。ただし着地の際の衝撃力や慣性力の大きさによっては、駒は反発し跳ねる。
着地の際に働く力は、地面からの反力、慣性力、重力、動摩擦力である。
※お好みで静電気による力や分子間力や第11次元力(冗談)を入れても良い。まずは働く力を全て書き出して行く事が大事だ。
3.状況と問題を合致させる
つまり上で書き出した状況について、どの状況を数式化すればどの問題が解けるかを対応させる。
慣れるとここまでを頭の中で瞬時に行えるようになる。面倒臭いが、まずは練習と思ってここまでをやってみよう。
4.次回への宿題
続きは次回に回したいと思うけど、ここで一つ問題です。
物体が静止するという事は力の釣り合いとモーメントの釣り合いの両方について、釣り合いが取れている状態を表します。
力の釣り合いが取れていない場合、物体は移動を始めます。モーメントの釣り合いが取れていなければ物体はその場で自転を開始します。(※これは非常に重要な概念です!)
ではここで問題です。『はしごくだり』の『はしご』を回転している瞬間の駒において、『駒』と『はしご』との間では力の釣り合いが取れているでしょうか?
次回はここから考えて行きたいと思います。